最近の『井関隆子日記』の研究状況
●最近、『井関隆子日記』の研究が、諸方面で行われるようになった。ようやく、近世女性史の中でも、注目を集めるようになったという事である。かつて、昭和女子大学でも、学生が卒論に取り上げ、なかなか良い研究をしたものもあった。また、二松学舎大学の、中津美恵子氏の卒論は『二松学舎大学人文論叢』第28輯(昭和59年8月)に掲載された。今後、気付いたものを紹介してゆきたい。
●小谷喜久江 『江戸後期における武家女性の生き方―女子教育の面からの一考察―』 (2006年5月15日、マッコーリ大学、学位論文)
目 次
序章 ……………………………………………………………… 1
第一章 江戸時代の教育 ……………………………………… 6
第一節 儒教の浸透 ………………………………………… 6
第二節 儒者の活躍 ………………………………………… 9
1、林羅山
2、中江藤樹
3、貝原益軒
第三節 幕府による儒教の奨励 …………………………… 13
1、徳川綱吉の政策
2、徳川吉宗の政策
3、松平定信の政策
4、武士の学校
@
藩校
A
私塾と家塾
5、儒教の教育への影響
第二章 武家女性にもとめられた理想像 …………………… 20
第一節 女子の教育 ………………………………………… 20
第二節 女訓書 ……………………………………………… 21
1、家訓
2、鑑草
3、比売鑑
4、唐錦
5、女大学宝箱
6、女大学
第三節 男子と女子の教育の違い ………………………… 39
1、男子の教育
@
家庭教育
A
塾通い
B
藩校の教育
C
日新館の教育内容
2、女子の教育
@
会津藩の場合
A
水戸藩の場合
3、男子と女子の教育の違い
第四節 求められた女性象 ………………………………… 60
第三章 武家女性に与えられた教育環境 …………………… 64
第一節 国学の流行 ………………………………………… 64
1、国学の誕生
2、賀茂真淵の門人
3、県門の女流歌人たち
4、荷田蒼生子
5、文会と歌集
6、江戸以外の国学者
第二節 御殿奉公……………………………………………… 82
第三節 御殿の「表」と「奥」 …………………………… 83
1、「奥」の職制と役割
2、「奥」に仕えた女性たち
@
井上通女の江戸藩邸暮らし
A
只野真葛の仙台藩「奥」奉公
4、教育の場としての「奥」
第四章
日記・著作に見る武家女性の実像 ………………… 102
第一節
儒教倫理に批判の矢を放った女性解放の先駆者・只野真葛
………………………………………………… 102
1、真葛の育った環境
2、時代背景
3、真葛の受けた教育
4、結婚
5、『独考』を書くに至るまで
6、『独考』に見る真葛の思想
7、馬琴の『独考』批判
第二節 天保改革期の江戸を旗本の目で見た井関隆子 …… 126
1、日記執筆までの経緯
2、日記執筆の動機
3、井関隆子の性格
4、井関家における隆子の位置
5、隆子と将軍家
6、天保改革と隆子
7、隆子の仏教・儒教批判
8、個人としての井関隆子
第三節 幕末の紀州を克明に記録した川合小梅 …………… 152
1、紀州藩の教育
2、川合小梅の生い立ち
3、『小梅日記』について
4、天保期からの川合家の様子
5、天保の社会情勢
6、川合家の日常
7、小梅の政治への関心
8、武家女性としての川合小梅
第五章 江戸後期の武家女性の行き方 ………………………… 181
1、国学の影響
2、自己表現の試み
3、政治・経済への関心と男性への羨望
4、隠居後の生活
5、儒教的理想像とのギャップ
第六章 結論 ……………………………………………………… 198
文献目録 …………………………………………………………… 202
論文・論考 ………………………………………………………… 207
……………………………………………………………………………
【感想】
この論文は、テーマが、江戸後期の武家女性の生き方を取り上げたものであり、
目次を一覧しても分かるように、大変な労作である。そのような時に、井関隆子を問題にした事は、30年も以前に、この女性の日記にめぐりあって、以後、その宣伝に努めてきた私としては、誠に嬉しいことである。今後とも、文学の世界だけでなく、近世の歴史や思想史の方面から追究される事を切に念じている。
(2006年7月10日、深沢秋男)